天涯孤独が不安なあなたへ『おひとりさま日和』あらすじ・感想

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この記事では『おひとりさま日和』のあらすじ・感想をご紹介します。

天涯孤独で将来が不安な方へ是非読んでいただきたい本です。

『おひとりさま日和』は一人暮らしをテーマに、6人の女性作家が書き下ろした短編集。

各作品では独自の視点から「おひとりさま」の日常や心情が描かれています。

一人暮らしの何気ない日々の中に、孤独、安心、温もり、時には小さな奇跡が訪れる。

何もないようで、何かがある。

そんな「おひとりさま」の世界を覗いてみませんか?

「リクと暮らせば」 大崎梢

あらすじ

夫を亡くし一軒家で一人暮らしをしている照子84歳。

友人の身におきた物騒な事件に不安を感じていた照子。

知人から聞いたレンタル番犬サービスを利用し、シェパード犬のリクと一緒に暮らし始める。

最初は半信半疑だった照子。

しかしリクの忠誠心と見かけによらない人懐っこさに二人の距離が縮まるのに時間はかからなかった。

お互い信頼を寄せ合いながら絆が深まっていく

ある夜照子が寝静まっていると、突然家の周りに不審な気配が。

リクはその異変をいち早く察知し、必死に照子を守ろうとする。

いかつい顔の大型犬に甘えられると、なぜか自分が若い娘にもどった気がする。

素敵な騎士に守られるお姫様気分になってしまうせいか。

「リクと暮らせば」 大崎梢著より引用

感想

物語を読み終えた私はすぐにインターネットでレンタル番犬について調べはじめました。

天涯孤独でアラフィフ。

このサービスならおひとり様の老後を安心して過ごせるかもしれないと思ったからです。

残念ながらレンタル番犬は実在しませんでした。

体験や癒しを目的としたレンタルサービスはありますが、番犬としての役割を求めるとなると安全面などの課題から実現は難しいのかもしれません。

今ではすっかり浸透しているアニマルセラピー。

動物たちは人の心に寄り添い、ときには病気の治療にも良い影響を与えることが知られています。

しかし、かつては「動物が人間の心や体に影響を与える」など考えもしなかった時代がありました。

これから先、おひとり様で老後を迎える人の割合はますます増えていくでしょう。

日本の国立社会保障・人口問題研究所の報告によれば、30年後には5人に1人が一人暮らしになるといいます。

リクのような頼もしい相棒を求める需要も増えていくことでしょう。

そう考えると「レンタル番犬」が実現する未来は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。

ただの防犯目的ではなく、孤独な日々にそっと寄り添う存在として。

「幸せの黄色いペンダント」 岸本葉子

あらすじ

持ち家のマンションに住むナツは60歳。

フィギュアスケート鑑賞が趣味のおひとり様だ。

持病があり、緊急時に備えて「黄色いペンダント」を肌身離さず身につけている。

このペンダントのボタンを押せば外部とつながり、係員が駆けつけたり、相談ができるシステムになっている。

同じマンションに住む和代とはゴミ集積場で顔を合わせるたびに立ち話をするようになった。

きっかけは互いの趣味がフィギュアスケート鑑賞だったこと。

70代の和代もまたおひとり様だった。

歯に衣着せぬ物言いをする彼女は、ナツにとって本来なら友達にならないタイプだった。

それでも共通の趣味があるという理由で、なんとなく付き合いが続いていた。

ある晩普段はラインでやりとりをしている和代から突然の電話。

「ペンダントを貸してほしい」

差し迫った声に和代の緊急事態を知ったナツは。

「年末の全日本が最後になると思うのよ」
しめった息をつく。
伏せたまつ毛は先程「スケートは顔よ」と言った攻撃的な様子が嘘のようにしおらしく、その振れ幅の大きさからしてフィギュアスケートという共通の話題がない限りナツにとってはやはり友達になれそうにない人だった。

「幸せの黄色いペンダント」 岸本葉子著より引用

感想

「無理して人に合わせるくらいなら、一人の方が気楽だ」

この物語を読んで私はそう感じました。

ナツと和代は同じマンションに住み、共通の趣味であるフィギュアスケート鑑賞を通じて会話をするようになります。

だからといって友達になれるかというとそれは別の話。

性格の合わない相手との関係を続けるのは、正直面倒に感じます。

和代の生き方には驚かされながらも、共感するところもありました。

いくつになっても「女であること」を忘れない。

自分の好きなことに没頭する姿勢。

周りにどう思われようと、自分の「好き」を大事にする

それがおひとり様の醍醐味なのです。

そのエネルギーに感心して、若さを保つ秘訣なのかもしれないと感じました。

「永遠語り 」 坂井希久子

あらすじ

48歳の十和子は草木染め作家。

師匠でもあった叔父の死後、都内山奥の古民家にひとり静かに暮らしている。

8歳年下の恋人とは遠距離恋愛。

月に一度、彼は都内から十和子に会いに来た。

「会って話がしたい」

数日前に届いたそのメールに、十和子は嫌な予感を抱いていた。

食事の準備をして彼を待っていた十和子に、恋人は「好きな人ができた」と告げる。

「しょうがないね」

そう答えた十和子へ恋人が返した言葉に彼女は困惑する。

離島を除けばここは東京で唯一の村である。
移り住んでからもう20年以上が経つけれど郵便物の宛先が東京都になっていることにいまだ違和感を覚えるほどの田舎である。
住まいは築年数不明の平屋の古民家だ。
集落からやや離れた山の中腹に建っているため隣家はない。
立川のマンションに暮らす母には「女ひとりであぶないんじゃない?」と心配されるが気をつけるべきは熊くらいのもの。人はまず用がなければこんなところまでやってこない。

「永遠語り 」 坂井希久子著より引用

感想

この物語にはほかの作品とは異なる、まるで映画のようなニュアンスがあります。

目を閉じると木々が生い茂る山奥の風景が広がります。

枝がこすれ合い、ささやくような音を立てる。

遠くでは鳥が鳴きひんやりとした朝の空気や、湿った土の匂いまでも感じられるようです。

十和子が食事を作る場面の描写も印象的です。

薪ストーブでスープを温めながら、目玉焼きと自家製のパンを焼く。

目玉焼きの卵は飼っている鶏が今朝産んだばかりのもの。

自分のためだけに朝食を作り丁寧に盛り付ける。

モーニングルーティンとしているこの時間はとても静かで優雅です。

思い出の中でたびたび登場する叔父の存在。

歳を重ねるごとに強く、そして愛情深くなった十和子に凛とした美しさを感じます。

自分の生き方を貫く女性の強さを教えてくれる物語でした。

「週末の夜に」 咲沢くれは

あらすじ

中学教師の蓮見頼子にとってレイトショーは特別な時間だ。

暗闇の中、大画面に映し出される物語に没頭する。

それが彼女にとっての最高の贅沢だった。

同じ中学教師だった夫とは14年前に離婚した。

「君はひとりでも生きていける」

そう言い残して夫は愛人のもとへ去っていった。

その夜も頼子は映画を楽しみ、劇場を出た時だった。

偶然元教え子の母親と出会い連絡先を交換する。

彼女もまた離婚を経験し、今は一人で生きていた。

一緒に何かをしても心が離れたままの夫とすごすより一人のほうがずっといい。
頼子はそんな風に意地をはっていたのかもしれない。
でも今やっと週末の夜に一人で過ごすことは少しも寂しいことではないのだと心から思える。

「週末の夜に」 咲沢くれは著より引用

感想

大人になると、一人で過ごすほうが楽だと感じることが増えていきます。

それでも、たまに誰かと食事をすると

「意外と楽しかった」

と思うことはありませんか?

本作の主人公・蓮見頼子も、一人の時間を大切にする女性です。

レイトショーの映画館で、誰に気兼ねすることなく物語の世界に没頭する。

それが彼女にとっての至福の時間でした。

けれどある偶然から、彼女は思いがけず誰かと時間を共にすることになります。

一人を楽しむ心地よさと、誰かと過ごす時間の温かさ。

どちらも自分を満たしてくれるもの。

“一人を楽しめるから、誰かといる時間も楽しめる”

そう言い換えることもできます。

だからこそ、まずは自分の時間を大切にしたいと思わせる物語でした。

「サードライフ」 新津きよみ

あらすじ

滝本千枝子、66歳。

静かな老後を求め、郊外に一軒家を購入したわずか一ヶ月後に夫は急死した。

原因は急性大動脈解離だった。

優しくて頼もしい夫に頼り切りだった千枝子は車の運転もままならない。

近所に知り合いもなく途方にくれる千枝子に、東京に住む娘が同居を提案する。

娘夫婦のマンションに一時的に身を寄せるものの、そこに自分の居場所はなかった。

ある夜、娘夫婦の会話を偶然耳にした千枝子はマンションを出た。

自宅に戻り

”これからどうしようか”

一人きりの静まり返った家で、ぼんやりと考えていたその時、庭に見知らぬ老女が迷い込んできた。

そう私はおひとり様。

地域の人達の力をかりながら強くたくましく生きていく。

「サードライフ」 新津きよみ著より引用

感想

たとえ家族であっても何気ないひと言が、相手を傷つける事があります。

夫を亡くし自分の存在を否定されたような寂しさと悔しさ。

その痛みがあったからこそ、新しい人生を切り開く力に変わったのでしょう、

千枝子は思い切って知り合いのいない土地に飛び込み、新しい環境に溶け込もうとします。

最初は手探りだった交流が、やがて周囲の人々との温かなつながりへと変わっていく。

そこには

「一人では生きられない」

と決めつけた家族さえ知らなかった、彼女の本当の強さがありました。

「サードライフ」は残された人生をどう生きていくかを問いかける物語です。

血がつながった家族でなくても助けてくれる人はいて、自分もまた誰かの助けとなる。

孤独の先にある温もりと、新しいつながりの中で見つける自分らしさ。

千枝子の言葉は、きっとあなた自身の中にも響くことでしょう。

「最上階」 松村比呂美

あらすじ

53歳の成美は自己所有のマンションで一人暮らしをしている。

中学から高校までの間、里親に育てられた。

幼い頃、父親から虐待を受けて児童養護施設に預けられていたところを引き取られたのだ。

その里親の介護のため、長年勤めていた地方銀行を退職し現在は無職である。

結婚経験は一度もない。

ある日隣人から泥付きの野菜を譲り受けることになった。

この出来事がきっかけで、成美は住人たちがさまざまな事情を抱えていることを知る。

「マンション内にコミュニティがあったらいいのにな」

思いがけずに楽しい時間を過ごせたと喜ぶ隣人が提案する。

成美はマンション最上階に住むオーナーの部屋を訪れた。

コミュニティを作れないかと相談すると、オーナーは難色を示し、どうしても作りたいならこのマンションを買わないかと話を持ちかけられる。

人とのつきあいはシンプルな方が良いと思うのよね。

深くつき合えばそれだけ問題が出てくるものよ。

「最上階」 松村比呂美著より引用

感想

この物語には、年齢も職業も家庭環境も異なる4人の女性が登場します。

彼女たちはそれぞれ違った悩みを抱えながらも、今を懸命に生きています。

唯一共通しているのは同じマンションに暮らしているということ。

マンションという空間は戸建てのように密接なご近所付き合いはありません。

だからといって完全に孤立しているかといえば、そうではありません。

廊下で交わす挨拶やちょっとした会話が、そこに住む人々の間に緩やかな「共同体」を生み出しています。

物語に登場するマンションコミュニティも、そんな関係性の延長線上にあるものかもしれません。

調べてみると実際にコミュニティを取り入れているマンションは少なくありませんでした。

情報交換や悩み相談ができたり、子供向けのイベントを開催したりと活動の幅は多岐にわたっています。

防災活動の一環として定期的に防災訓練をしたり、実際に地震が発生した場合にはマンション内の館内放送を使って避難情報や高齢者への声かけを行ったという事例もありました。

マンションコミュニティは、人付き合いが苦手な方にとっては面倒に感じるかもしれませんが、有事の際には心強い存在になります。

普段は適度な距離を保ちながらも、いざという時に支え合える関係が築けるのは、大きなメリットといえるでしょう。

この物語は、私たち天涯孤独の人間にとって大切なことを改めて気づかせてくれる作品でした。

困ったときに支え合える「共助」の大切さと、それでも最終的には自分自身で生活を守る「自助」の必要性

そのどちらが欠けても、安心して生きていくことは難しいのかもしれません。

だからこそ、無理のない範囲で助け合えるつながりを持ちつつ、自分自身の資産や仕事もきちんと備えておくことが大切なのだと感じました。

『おひとりさま日和』まとめ

『おひとりさま日和』は一人暮らしをテーマにした短編集です。

6人の女性作家が描くのは、ちょっと笑えて、ちょっと沁みるリアルな日常。

等身大の彼女たちの姿に共感したり、新しい発見があったり。

ひとりで生きる女性の生き方や考え方のヒントが詰まっています。

天涯孤独で一人の老後が不安な方に是非読んでいただきたい1冊です。

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